IoTセンサーやインフラ監視で時系列データベース(TSDB)が必要になっても、月$100以下で運用できる選択肢は意外と多い。2026年現在、InfluxDB 3.0の全面書き直しやAWS Timestreamの新規終了などエコシステムが変化する中、TimescaleDB、InfluxDB Cloud、ClickHouse Cloud、Prometheusの4つを用途別に比較する。
Tiger CloudのPerformanceプランが月$30からでPostgreSQL完全互換。hypertables、continuous aggregates、最大98%圧縮により、小〜中規模IoTワークロードを月$100以内に収められる。SQLで書けるため既存のBIツールや分析ワークフローがそのまま使える。
無料枠と従量課金(最低料金なし)により小規模なら月$100以下で運用可能。Telegrafエコシステムが強力でメトリクス収集に優れる。ただし1.x/2.x/3.0のバージョン断片化に注意が必要。
Basicプランが月$66.52からで、1日6時間稼働+アイドリングでコスト抑制可能。列指向ストレージと圧縮により数十億行のログ分析を秒単位で実行。時系列専用ではないが分析ワークロードに最強。
IoTセンサーの爆発的なデータ流入、Kubernetesクラスタのメトリクス監視、アプリケーションログの時系列分析——これらを支える時系列データベース(TSDB)は、インフラエンジニアにとって「選択を誤ると後から引き返せない」基盤技術だ。しかし2026年、この領域は激しく動いている。
InfluxDBは3.0でApache Arrow / Parquetベースの全面書き直しを実施し、1.x / 2.x / 3.0というバージョン断片化が最大の課題となっている3。AWS Timestreamは新規提供を終了し、ユーザーは代替手段を探されている。こうした移行期において、月$100以下という予算制約の中でどのTSDBを選ぶべきか——本記事では4つの有力候補を用途別に評価する。
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選定にあたって重視したのは以下の3軸だ。
| 観点 | なぜ重要か |
|---|---|
| クエリ言語 | SQLを知るチームにとってPromQLの学習コストは無視できない。逆にSQLベースなら既存のBIツールや分析ワークフローがそのまま使える1 |
| 価格モデル | 従量課金・固定制・完全無料の3パターンがあり、データ量とクエリ頻度によって最適解が変わる2 |
| IoT適性 | センサーデータの高頻度書き込み、ダウンサンプリング、長期保持の3つをどう扱えるかがIoT用途の鍵1 |
Tiger CloudのPerformanceプランはコンピュートが月$30から。 ストレージは$0.177/GB-month(平均5倍圧縮)で、30日間の無料トライアルにクレジットカード不要6。時間単位の従量課金で、Performanceプランは最大8 CPU / 32GBまでスケールする6。
最大の強みはPostgreSQLとの完全な互換性だ。TimescaleDBはPostgreSQLを拡張する形でhypertablesとHypercoreハイブリッドストレージを提供し、IoTセンサーデータとリレーショナルデータ(ユーザー情報、デバイスマスターなど)を1つのデータベースで扱える3。continuous aggregatesによる自動ダウンサンプリング、最大98%の圧縮率6により、小〜中規模IoTワークロードを月$100以内に収めることが現実的だ。
Tiger Dataの比較記事でも「IoT+リレーショナルデータに最適」と評価されており2、CrateDBの比較記事でもPostgreSQL互換性の面で高く評価されている1。
月$100で収めるコツ: Performanceプランの最小構成(月$30)で始め、ストレージ量に応じて段階的にスケールする。5倍圧縮を活かせば、数十GBのセンサーデータでも月$50〜80程度で運用可能だ6。
無料枠(5MB/5分の書き込み、30日保持、2バケット)があり、Usage-Based Planは最低料金なしの従量課金だ4。課金内訳は、データ書き込み$0.0025/MB、クエリ$0.012/100回実行、ストレージ$0.002/GB-hour、エグレス$0.09/GB4。小規模なメトリクス収集であれば月$100以下に収まる。
InfluxDBは長年メトリクスとオブザーバビリティの分野でデファクトに近い存在だった。Telegrafを中心とするエコシステムが強力で、多種多様な入力プラグインが用意されている1。CrateDBの比較記事では「小〜中規模メトリクスに最適」と評価されている1。
ただしバージョン断片化には要注意だ。1.x / 2.x / 3.0でAPIやクエリ言語(InfluxQL / Flux / SQL)が異なり、3.0はApache Arrow / Parquetベースの全面書き直しである3。移行パスの確認が必須だ。Tiger Dataの比較でも「バージョンの断片化」が指摘されている2。
月$100で収めるコツ: 無料枠でプロトタイピングを行い、本番移行時にUsage-Based Planの書き込み量とクエリ頻度を試算する。30日保持を超える長期データはダウンサンプリングして容量を抑える4。
Basicプランは月$66.52から。 1レプリカ × 8GiB RAM、2 vCPU、500GB圧縮データ、1日6時間稼働という構成だ5。コンピュートは8GB単位で分単位課金され、アイドリング(scale-to-zero)が可能5。Scaleプランは月$499.38からで予算超過だが、Basicでも分析ワークロードには十分な性能を持つ5。
ClickHouseの最大の武器は大規模データセットに対する分析クエリの速度だ。CrateDBの比較記事でも「非常に大規模なデータセットに対する高速な分析クエリ」に最適と評価されている1。列指向ストレージと圧縮により、数十億行のログやイベントデータを秒単位で集計できる。
ただしClickHouseは時系列専用ではない。タイムスタンプ付きデータの扱いに優れるが、TimescaleDBのようなhypertable自動パーティショニングやInfluxDBのようなダウンサンプリング機能は組み込みではない2。Tiger Dataの比較では「分析ワークロードに最適」と位置づけられている2。
月$100で収めるコツ: Basicプランの6時間/日稼働モードを活用し、バッチ分析の時間帯に絞ってコンピュートを起動する。アイドリング時は課金が停止されるため、1日数時間の分析であれば月$66.52に収まる5。ストレージは圧縮後のサイズで課金されるため、生データより大幅に安くなる5。
Prometheusは完全無料のオープンソースソフトウェア(OSS)だ。 Kubernetesエコシステムにおけるインフラ監視のデファクトスタンダードであり、PromQLという専用クエリ言語を持つ1。CrateDBの比較記事では「Prometheus互換の監視」用途でVictoriaMetricsと並んで言及されている1。
ただしQuestDBの代替記事が指摘する通り、Prometheusは厳密にはTSDBではない3。pull型のメトリクス収集に特化しており、長期保存は設計上の想定外だ。長期データ保持にはThanosやGrafana Mimirを組み合わせる必要がある3。
月$0で運用できる反面、セルフホストが前提となる。サーバー代、運用コスト、ストレージ管理は自己責任だ。小規模なKubernetesクラスタの監視であれば1台のVMで十分だが、データ量が増えるとストレージとメモリの管理が課題になる。
月$100で収めるコツ: セルフホストのサーバー代(月$20〜50程度のVPS)のみで運用可能。長期保存が必要な場合はThanos + S3互換ストレージを組み合わせ、オブジェクトストレージ代(月数ドル)を追加する。ただし運用リソースを「コスト」と換算すると、マネージドサービスの月$30〜66と大差ない場合もある。
| TimescaleDB (Tiger Cloud) | InfluxDB Cloud | ClickHouse Cloud | Prometheus | |
|---|---|---|---|---|
| クエリ言語 | SQL (PostgreSQL) | InfluxQL / Flux / SQL | SQL | PromQL |
| 価格モデル | 従量(コンピュート$30〜+ストレージ)6 | 従量(書き込み・クエリ・ストレージ別)4 | 従量(Basic $66.52〜、アイドリング可)5 | 完全無料(セルフホスト) |
| IoT適性 | 高(hypertable+リレーショナル統合)3 | 中〜高(Telegrafエコシステム)1 | 中(分析特化、時系列専用ではない)2 | 低(監視特化、長期保存は外部連携)3 |
| 月$100での運用 | ✅ Performance最小構成で可能6 | ✅ 小規模なら可能4 | ✅ Basic 6h/日で可能5 | ✅ セルフホストで$0 |
いずれの選択肢も月$100以下で始められる。重要なのは、データの性質(IoTか監視か分析か)と、チームが使えるクエリ言語を先に定義することだ。そこから逆算すれば、最適なTSDBは自然と決まる。
| 選定 | 価格 | クエリ言語 | 価格モデル | IoT適性 | |
|---|---|---|---|---|---|
TimescaleDB ▶ 選定 | — | SQL (PostgreSQL) | 従量(コンピュート$30〜+ストレージ) | 高(hypertable+リレーショナル統合) | 価格を見る ↗ |
InfluxDB メトリクス・オブザーバビリティ特化で無料枠あり | — | InfluxQL / Flux / SQL | 従量(書き込み・クエリ・ストレージ別) | 中〜高(Telegrafエコシステム) | 価格を見る ↗ |
ClickHouse 大規模分析クエリの圧倒的スピード | — | SQL | 従量(Basic $66.52〜、アイドリング可) | 中(分析特化、時系列専用ではない) | 価格を見る ↗ |
Prometheus 完全無料のkubernetes/インフラ監視デファクト | — | PromQL | 完全無料(セルフホスト) | 低(監視特化、長期保存は外部連携) | 価格を見る ↗ |
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